【北野・Fawcett・坂本班】 ネオ性染色体をもつニホンイトヨにおいてイトヨとの種間交雑後に性染色体が急速に排除されることを明らかにした論文が Nature Ecology & Evolution 誌に掲載されました。
ニホンイトヨは、染色体融合によって生じたネオ性染色体をもつ魚類です。ニホンイトヨでは、祖先型のY染色体と、それまで常染色体であった染色体が融合することでネオY染色体が形成され、近縁種であるイトヨとは異なる性染色体システムが進化しました。私たちはこれまで、この性染色体の進化と2種の間の生殖隔離との関係を研究してきました。
2011年の東北地方太平洋沖地震に伴う津波は、この2種が自然界で大規模に交雑する機会をもたらしました。岩手県大槌町では、津波と地盤沈下によって新たな淡水環境が形成され、淡水性のイトヨと海洋性・遡河回遊性のニホンイトヨが接触し、種間交雑が生じました。
私たちは、この交雑集団を2012年から2020年まで9年間にわたって追跡し、交雑後のゲノム構成が世代を経てどのように変化するのかを調べました。2012年には採集個体の38%が雑種でしたが、その後、ニホンイトヨ由来のゲノム領域は急速に減少し、約10世代後の2020年には、集団のゲノム構成はほぼイトヨに戻っていました。さらに、淡水環境での生存、海への移動、配偶行動、雑種雄不妊などに関わる生殖隔離遺伝子座では、ニホンイトヨ由来のアレルがゲノム背景よりも速く減少していました。性染色体上にも複数の生殖隔離遺伝子座が存在しており、これらの領域では交雑後の遺伝子浸透が強く制限されていました。
Hosoki, T.K., Mori, S., Kagawa, K., Nishida, S., Kume, M., Nagano, A.J., Kanbe, H., Kakioka, R., Nakamoto, K., Iino, Y., Kodama, M., Oba, S., Seong, T., Kabeya, N., Ishikawa, A., Yoshida, K., Yamasaki, Y.Y., and Kitano, J. (2026) Rapid genome-wide purging following tsunami-induced hybridization. Nature Ecology & Evolution
